デフレの正体 経済は「人口の波」で動く
著者:藻谷 浩介
出版社:角川書店/価格:¥760
オススメ度:読んではいけない



デフレの原因を人口オーナスに求めた1冊

著者が繰り返し主張しているのは、
「率をみるな、量をみよ!」
ということ。

・失業率では就業状況はわからない。就業者数の増減をみよ。
・出生率を上げても人口減少に歯止めはかからない。親の数をみよ。
・外国人労働者の受け入れを加速しても、生産年齢人口の減少を補うには至らない。退職者の総数をみよ。
・生産性を向上してもGDPは上昇しない。
etc

統計データを用いながら、社会常識となっている経済論議を論破していく本書は、これまで薄々は感じていながら、いまいちピンとこなかった生産年齢人口減少の真の(大きな)影響を認識させてくれました。

人口動態に対する処方箋として、
・高齢富裕層から若者への所得移転
・女性の就労・経営参加の促進
・外国人観光客・短期定住者の受入
などを処方するとしています。

デフレの正体としてはこれまで
・公共投資の減少
・マネーの供給不足
・各種規制
などが言われてきたが、人口減少もデフレの正体の1つであることに間違いはなく、人口減少への対策が緊急の課題であることを教えてくれます。


と、ここまでは本書を評価するレビューですが、残念ながらこのままレビューを終わることはできません。
本書には致命的な欠点があるのです。

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(続き)

著者が「私は無精者で、経済書やビジネス書は本当に数冊しか読んだことがない」と言っているとおり、経済学の基礎的知識がないようで【間違いだらけ】なのです。


例を挙げると・・・

P38「01−08年の8年間だけで累計138兆円もの経常収支黒字が日本に流れ込みました。…実際にそれだけの額を貢いだ外国にしてみれば、俺たちからそれだけ儲けて、不況だなんてよく言うよという思いかも…。」

貿易黒字とは【外国への資金の貸出】のことです。
つまり日本のお金が海外に流出しているのであって、儲けなどでは決してありません。


p189「稼いだ外貨が内需に回る仕組みを再構築しない限り」

海外に貸出・投資をしているので、貿易黒字が内需に帰ってくることはありません。
外貨が返ってくると、そのぶん貿易黒字は減少します。


P67「日本はモノづくりの国でありまして」

日本は第3次産業がGDPの約7割を占めるサービスの国です。


p169「売れようが売れまいが在庫を積み増しながら生産を続ければ、GDPは増え続ける」

国内総生産(GDP)=国内総所得(GDI)=国内総支出(GDE)
作ればGDPが増える訳ではありません。
GDPとは付加価値の総額
付加価値=販売価格−原価です。


また、人口オーナスへの処方箋の1つの
・女性の就労・経営参加の促進
についても、女性の就業率が高いほど出生率が低くなる相関関係があるため、女性の就労・経営参加の促進は人口減少を加速させてしまいます。



人口オーナスを問題点として取り上げた本書は、新たな視点を示したことでヒット作となりました。
人口オーナスの解消に取り組むことは非常に大事であり、私も最初は大絶賛でした。
しかし、調べてみると記述内容の誤りがあまりにも多すぎる・・・。

これでは間違った知識を読者に与えてしまうため、本書を推薦することはとてもできません。
評価は残念ですが【読んではいけない】とします。

斬新な内容であるだけに、正確な経済知識の上で考察して欲しかった。


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