株式投資のファンダメンタル分析はいろいろな種類のものがあります。

企業の決算書を読み込む財務分析もあれば、バリュー指数を算定する分析、事業内容などを見る定性分析、など数を上げればキリがありません。

これらのファンダメンタル分析には、大切なのに投資家が忘れがちな分析があると感じています。

何かというと「成長余力」分析です。
「成長余力」分析とは言い換えると「市場規模」の分析とも言えます。
みなさんは投資している会社が営んでいる市場規模を把握しているでしょうか?


代表的な比較銘柄として、フージャースT&Gを取り上げてみます。
この両者は成長率のよく似た高成長銘柄です。

フージャース
      2006年3月期  2005年3月期  2004年3月期
売上高  29,913百万円 21,032百万円 13,201百万円
営業利益  5,071百万円  2,905百万円  1,530百万円
経常利益  5,064百万円  2,857百万円  1,446百万円
当期利益  2,996百万円  1,689百万円   823百万円

T&G
     2006年3月期2  2005年3月期  2004年3月期
売上高  33,962百万円 21,830百万円 11,444百万円
営業利益  4,981百万円  3,454百万円  1,595百万円
経常利益  5,153百万円  3,501百万円  1,447百万円
当期利益  2,905百万円  2,049百万円   674百万円

フージャースはマンションデベロッパー、T&Gは結婚式場と事業内容は全く異なりますが、両社の成長ペースは偶然ですが非常に似ています。
しかし、今後もこの傾向が続くのかと言うと、疑問符がつきます。


どういうことか説明していきましょう。

分譲マンションは首都圏で年間約8万戸供給されています。
市場規模を計算しますと、マンション1戸の価格を安めの3000万円と見積もっても、
8万戸×3000万=2.4兆円
の市場規模があることになります。

一方のT&Gの市場規模ですが、
結婚式場各社のIRからは市場規模2兆円とアナウンスされています。
これは、全国の婚姻組数は72万組、挙式披露宴の平均単価300万円という数字から、
72万組×300万円=2.16兆円
と算出される数字が根拠なのですが、この数字は都合の良い数字を並べたものだと思われます。
何故なら、これは結婚したカップルが全て挙式披露宴を行ったと想定した場合の数字であり、挙式披露宴をしない人も大勢いますから、本当の市場規模はもっと小さくなるはずです。
経済産業省 特定サービス産業実態調査によると市場規模は8900億円となっています。
平均単価も254万円となっており、50万円近い差があります。
どちらが正しい数字なのかは不明ですが、300万円の根拠はゼクシィの調査です。ゼクシィの市場調査に応募する人ですから、結婚に対する関心の高い人達である可能性が高く、数字が高目にでることは十分考えられます。


このように、市場規模を見ると成長余力がどのくらいあるか分かってきます。
首都圏だけで2兆円超あるフージャースと、全国でせいぜい1兆円しかないT&Gでは大きな差があります。

実際、両社の今後の成長戦略にこれは如実に現れています。

フージャースは平成29年度に5000戸という長期経営計画を持っています。
分譲マンションで今後も成長していこうとしているわけです。
一方のT&Gの方は、積極出店は今期が最後でして、今後は多角化での成長を目指すとしています。
本業に邁進できる会社と副業に手を出さざるを得ない会社。
そういう構図だと私は思います。


市場規模の問題がある企業はラウンドワンも当てはまるでしょう。

市場規模1.2兆円に対し、09年度には1200億円の売上に達します。
シェアは10%を占めることになりますから、その後の出店余力がどのくらいあるのか見定める必要があるでしょう。


T&Gもラウンドワンも業界では圧倒的な強みがある勝ち組企業だと思いますが、成長余力とPERを考えると積極的に投資をできる株価ではないな、と考えています。

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(続き)

T&Gに投資した当初はこの市場規模の問題に私は気付いていませんでした。
これを教えてくれたのはokenzumoさんです。
okenzumoさんの銘柄分析には必ず市場規模の調査があります。

いろいろ物議をかもした成長株マニュアルですが、市場規模についてきちんと述べられています。株式投資に関する本はたくさん出ていますが、市場規模を調べろと書いている本は余り見かけないので、その部分では読む価値はあると思います。

もっとも、私がブログで書いてしまったので価値はなくなってしまいましたが(笑)
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